新しい天皇陛下のお若き日のご著書『テムズとともに』
(平成5年刊、学習院教養新書)。
イギリスでの2年間の留学体験をまとめられている。
その中に次のような記述がある。「到着翌日の6月22日には、英国議会の開会式を見学した。
式は、エリザベス女王陛下、御夫君のエディンバラ公フィリップ殿下の
ご臨席のもとに、上院においておごせかに行われた。
まず、きらびやかな礼装に身を包んだ上院議員が整列する中、
きわめてフォーマルな装いの女王陛下とフィリップ殿下が入場される。
やがて、女王陛下からの使者が下院に赴き、発声とともにドアを叩く。
下院では開けたドアを使者の前で閉めてこれを拒絶すること2回。
3回目にようやく開け、下院議員全員が上院に向かう。いわば女王陛下の使者に三顧の礼をつくさせるわけであるが、
私はこの一連の所作に、ピューリタン革命にまで遡る、
王権から自立した、議会を主体とする政治の理念が表されている思いがした。ほどなく式場に現れた下院議員の服装は平服である。
その中にはサッチャー首相の姿もあった。
…議会の開会式見学は、私にとって『伝統の国イギリス』を実感する
最初の機会であった」― 我が国の議会、つまり国会を構成する議員諸氏に、
果たして政治の“主役”としての責任感がどこまであるだろうか。それにしても、お若くして
「女王陛下の使者に三顧の礼をつくさせる」
下院の所作に頼もしさを感じられた、天皇陛下の懐の深さに驚く。
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